オレは、じいさんと仲が悪かった。
だから、ガンで入院した時も見舞いに行こうなんてこれっぽっちも思わなかった。
たまたま、友人がじいさんと同じ病院に入院した。
オレは、友人の見舞いに行くついでにじいさんの顔ぐらい見ておこうと思った。
これが最後になるだろうから、見納めにと。
病室、カーテンで仕切られた向こう側ベットで寝てるじいさんがいた。
ガリガリだった。
あちこちチューブに繋がれてて、肌が黄色くて、
髪が無くてときどき苦しそうに咳き込むじいさん。
弱弱しく息をするじいさんを見てオレは体中が熱くなり強張った。
立ってるだけで精一杯だった。
声を掛ける事も出来なかった。
少しでも気を抜くと、オレは絶対に泣いてしまうと思ったから。
その後、友人の病室に続く渡り廊下で泣いた。
あんなに嫌いだったのに。
何故か、涙が止まらなかった。
未だに、自分が泣いた理由が分からない。
でも、少なくとも、あの瞬間だけは
オレは、じいさんと一緒に生きたいと心から思った。