感動する話 恋愛

優しい彼

私には付き合って一年の彼氏がいました。

その彼氏(Sとします)には持病があり、心臓を患っていました。
一緒にご飯を食べていると胸を押さえて苦しがったり、偶に倒れたり、何度もキツいと言いました。
私はそんなSに何もしてあげることが出来ずにいました。
「大丈夫?」
とか何の根拠も無いことしか言えず、悔しく思う毎日でした。

そして冬になり、受験生である私達は勉強ばかりで連絡も取らなくなりました。
Sと私は受験が終わったら必ず連絡するからと約束し、勉強に励んでいました。
Sは頭が良く、レベルの高い高校を目指していました。

ある時、そんなSが推薦を受けていたという噂を耳にしました。
SにLINEし、
「高校どうしたの?」
と聞きました。するとSは、
「○○高校目指して頑張ってるよ」
と答えました。

何で、嘘をつくのだろう。
それに推薦を受けたその高校はレベルが低い商業科。何を考えているの。

私はSと揉め、嘘をつかれたことに腹を立てSと別れました。
そして、Sのことを気にすることも思い出すことも無く、普通に過ごしました。

暫くしてからSからLINEが届きました。

「あの時はすまん。俺、実は心臓の手術受けるん。一般入試の日と被って受験出来んから推薦受けた。嘘ついたのは、この大事な時期に動揺させたくなかったから」

この言葉に、私は不覚にも泣いてしまいました。

Sは理由も無く嘘をつく人じゃないと知っていたのに、訳も聞かず突然別れを告げ、何てことをしてしまったのだろうと後悔しました。

「俺は内定もらって高校決まってしまった。お前より先に受かってごめん。お前は絶対、普通科受かれよ。ああ、一般入試受けたかった」

「解ってる。あんたの分まで一生懸命勉強して合格するからね」

「お前が無事に合格すること、それが俺の願い。病院で応援してる」

沢山泣いてしまった。
こんな風に思っていてくれたなんて。

その日、私はSとよりを戻しました。
相変わらず連絡は取らないままで。

一般入試の三日前に、
「病院行く」
と連絡が入り、Sは入院しました。

そして私は一般入試の日を迎えました。
緊張した面持ちで志望校の校門まで行きました。

するとそこにはSが立っていました。
何も無かったような顔で、
「よっ!退院出来たから、喝入れに来た」
と言い、Sは笑っていました。

「喝入れて」
と背中を押してもらい、少し言葉を交わし、試験会場へ足を運びました。

そして私は見事合格しました。
Sは自分のことのように喜んでくれました。

久しぶりに会う約束をした時には、いつもと変わらない笑顔で
「受験お疲れさま!」
と抱き締めてくれました。

Sは一般入試当日。退院したばかりで胸を切ったところが痛むまま、無理してでも会いに来てくれていたそうです。サプライズだと言っていました。

何でこんなに良い人なんだろう。
嘘の訳もちゃんと確かめていたら良かった。
今でも後悔しています。

もし優しい彼が思わぬ嘘をついた時、それには絶対理由があるので確かめてください。
私みたいにならないでください。
皆さんの幸せを願います。

-感動する話, 恋愛
-