呆けてしまった祖母の話。
1~2月に1回の頻度で、伯母2人が祖母の様子見に行っているそうだ。
4人兄弟で末っ子の母は遠距離のため伯母方から電話で様子を聞いている。
…が、その話が(不謹慎だが)面白い。
1番上の伯母が行った時は『○○(2番目の伯母)が死んじゃって……』
2番目の伯母が行った時は『△△(母、末っ子)が死んじゃって……』
次々と祖母の脳内で(祖母の)娘達が死んだり生き返ったりしているのだ。
そんな中、お盆にようやく母と私が会いに行けた。
1年半ぶりに会った祖母は、とても小さかった。
「ばあちゃん、来たよ。私のこと、わかる?」
ベッドの横で母が祖母の手を握りながら聞くと、
「ん~▲▲だっけ?」
「違うってば~△△でしょ?貴方がお腹痛めて産んだ娘よ、忘れないでよ~」
こうして目の前で言われると結構辛い。少しだけ母の顔が歪んだように見えた。
次は私の番。ちょっとだけ覚悟を決めた。
「ばあちゃん、今日は私も来たよ。分かる?」
「あらあら、■■じゃないの」
吃驚した。私の顔を見て間髪入れずに名前を言ってくれた。
1年に1度会うか会わないかの孫の顔を、名前を覚えていてくれた。
よく見ると、枕元に置いてある薬の隣に、私の成人式の時の写真。
泣きたいのをこらえ、両手で祖母の手を握った。
しわしわで細くなった手に、ありったけの温もりを注いだ。